夢をみた。
夢の中の私は、父と花屋さんにいる。
店先に並んだ花束の一つを、父は無造作にひょいと手に取り、私に買ってくれた。
父の一回忌の法要を無事終えたことへのねぎらいだったか。
それはよいが、法要の一週間後の命日をうっかり忘れてしていた。
前の週に実家で法要を済ませたことで、すっかり安心していたのだ。
夕方ふいに思い出し、慌てて庭の花を摘み、父の写真の前に手向けたのだった。
まあ、形式にこだわらない人だったから笑って済ませてくれたことだろう。
その翌日、夕食を食べているときだった。
ボトッと音がして目をやると、命日に手向けた花の一つの首から上が見事に落下して、下に散らばっていた。
父が我が家にも立ち寄って、「来たで」と合図をしてきたのかもしれない。
そういえば父は、「なんでもいいから、いつも家に花を生けておけ」とよく言っていた。
夢のおかげで、そんなことも思い出した。
父の教えに従って、庭に咲いた花の一輪でもいいから、花瓶にさしてみよう。
花にふれている時間はなかなかいいものだ。
花を生けると、その後も水を変えたり、枯れた花を取り除いたりとこまめに手を入れることになる。
「なんでもいいから、いつも家に花を生けておけ」
父は、暮らしの中にそういうゆとりを持て、と言いたかったのかもしれない。
夢の中ではあるが、父があの武骨な手で花束を買ってくれたことが嬉しかった。
私はいつまでも父の子供なのである。
