名鉄東大手駅のベンチに、日傘を忘れてきてしまった。
取りに行った日はすでに遅し、忘れた当日から3日を過ぎたので、忘れ物センターに移送されているという。
忘れ物センターは自宅から車で1時間以上かかる、太田川駅にある。
日傘を取りに行くだけのドライブは勿体ない気がした。
周辺には何があるのだろうと地図を眺めていたら、常滑が近い。
そうだ、日傘を受け取ったあと、常滑に行ってみよう。
前回常滑を訪れたのは10年ほど前、従妹と一緒だった。
「やきもの散歩道」を散策中、あるギャラリーで二人とも同じ急須に心奪われる。
シンプルでおおらかな姿、技術の高さがわかる丁寧なつくり、なかなか出会えない逸品だと思った。
私と従妹は、仲良く同じ急須を包んでもらったのだった。
暮らしの道具は使ってこそ、と思っているのでそれから毎日使った。
ところが私は、ほどなくその急須の注ぎ口を欠けさせてしまった。
それでも思い入れのある急須、紙やすりで欠けた部分を磨き、使い続けた。
そしてつい先日、力を加えたわけでもないのに、また少し欠けてしまった。
やはり廃棄する気にならない。
再び紙やすりで磨き、使い続ける。
いつか同じものを手に入れたいと思いながら。
そんな折、常滑に足を延ばすことになった。
今回も「やきもの散歩道」を気ままに散策。
気になったお店に入ったら、使い勝手のよさそうなフリーカップが目につき、デザート用に買い求める。
レジで包んでもらっているときにふと傍らに目をやると、あの急須がある!
わずかに模様の入り方は違うがあの急須だ。
「この急須、鯉江さんの急須ですね」
思わず店員さんに声をかけると、ちょうど入ってきたばかりとのこと。
なんでも作家さんがご高齢になられたため作る数がだんだん減り、何か月かぶりにやっと入荷したのだという。
「少しデザイン違いもあるのでみてください」と奥からもう一つの作品を出してきてくださった。
それはまさに我が家にある急須と同じもの。
ああ、これをご縁と言わずしてなんと言おう……
即決で迎え入れることにした。
忘れた日傘が、私を急須のもとへいざなってくれたのかもしれない。
いくつかの偶然が重なって、また出会えた二代目急須、今度こそ粗相のないようにしよう。
もちろん、初代急須もまだまだ大事に使おうと思う。
作り手の心意気が伝わってくる品は、暮らしに小さな明かりを灯してくれる。
そう簡単に手放せるものでもない。
